永井 武
日本で商用インタネットサービスが始まったのは1994年であるから、今年で13年経過した。そ の間、インタネットは電子商取引、ビジネスメールと並んで300億ページ(1)ともいわれるwebコン テンツの検索、閲覧に利用されている。インタネットのアプリケーションとしてwebが出現したの は1990年であり、webコンテンツは年々増加した。
1994年に、当時スタンフォード大学院生であったジェリー・ヤンとディビッド・ファイロの2 人が、興味深いwebコンテンツの索引を人海戦術で作成、ABC順に並べた。後にディレクトリ型 の検索エンジンをつけて無料で公開した。当時webコンテンツは5000万ページにも満たなかった が、情報検索は便利だったので、多くのユーザが利用した。1995年、ジェリー・ヤンとディビッド・ ファイロは、ヤフー社を設立した。ポータルサイトと呼ばれるトップページ、およびその次の階層 の余白に広告のスポンサを募り、バナー広告を載せ収益を拡大した。米国ヤフーの2005年度売上 げは50億ドル強である。
ヤフーのサービスは、トップページに買う、知る、楽しむなど6分野に分類された約60個のキ ーワード、およびトップページの下方にさらに数10個のキーワードを掲載し、合計100個以上の キーワードを並べ、そのうちの1つをクリックすると検索の欄を含む次の階層を表示することから 始まる。そこからユーザが必要な情報のキーワードを入力して検索することにより、検索結果を得 る。検索結果は現在改良されているが、サービス開始当初は無秩序に表示されるので、ないよりは 便利ではあるが、ユーザはコンテンツを読んで、必要な情報であるか否かを判断する必要があり、 煩雑であった。ユーザは必要なwebサイトのURL(Uniform Resource Locator)をメモしたり、お 気に入りにチェックを入れたりして、必要な情報を確保していた。グーグルがサービスを開始する 前まではこのようなweb検索が行われていた。
1998年、スタンフォード大学院生であったラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンがグーグルという 新しい検索エンジンを開発し、インタネット上に無料で公開した(2)。グーグル検索の最大の特徴は ユーザが入力したキーワードの検索結果が無秩序に出力されるのでなく、ユーザにとって最も有益 なものを1番目に、2番目に有効なものを2番目に出力するというようにユーザに有難い機能をも っている。世界中にある300億ページのwebコンテンツのなかから、ユーザが必要とするあらゆ る分野の最も有効な情報を瞬時に検索し出力してくれる。これが日本を除く世界中で最も使用され る検索エンジンとなった。数多く輩出したネット企業の中でヤフー、アマゾンを抜き去り、2007 年には時価総額24兆円となり、最も成功した企業である。本報告はグーグル検索に使用する技術、 ユーザに情報サービスを無料で提供しスポンサから広告料を徴収するビジネスモデル、グーグル検 索が人間社会にもたらすものについて報告する。
2.1 グーグル検索エンジン出現の前
1997年までDEC社のアルタビスタ(AltaVista)が、最も多くの人に利用された検索エンジンであ る。DECアルファを搭載したワークステーション(WS)に、当時webに存在したコンテンツのイン デックスを自動的に作成してサーバとし、ユーザに提供していた。しかし、DECは本業のミニコ ンが不振で経営難となり、コンパック、続いてHPに買収され、その技術は現在ヤフーで利用され ている。
1998年に最も多くの人が利用した検索エンジンはヤフー(Yahoo)とエキサイト(Excite)である。エ キサイトを起業したのはスタンフォード大学の6人の同窓生である。エキサイトはマイエキサイト という自分だけのトップページにビジネス情報、ニュース、無料メール、ユーザが住む地方の天気 予報などに加え、検索の窓をつけユーザに提供し利用者を集めた。検索サーバはインデックス検索 と全文検索の機能をもつ。
1999年に最も多くの人が利用した検索エンジンは、ライコス(Lycos)である。ライコスを開発し たのは東部のカーネギーメロン大学である。検索結果に要約および検索結果にリンクを張りアンカ ーテキストにして、そこをクリックすることで情報を提供することにより多くのユーザを獲得した。 アルタビスタ、エキサイト、ライコス、インフォシーク(Infoseek)などの検索エンジンが利用さ れたが、検索に使用したキーワードを多く含むwebサイトを表示することしかできなかった。その ため、いかがわしいサイトが、車、カメラ、携帯電話、PC、ソフトウエアなど多くのユーザが検索 のために使用するキーワードをいかがわしいサイトに多数入れることにより、検索エンジンは検索 結果の上位にいかがわしい情報を上位にもたらし、ユーザは下位に表示されている必要な情報を探 さねばならなかった。
2.2 バックリンク(3)
1995年、スタンフォード大学コンピュータサイエンス専攻の大学院生であったラリー・ペイジと サーゲイ・ブリンは、伝統的な学問の世界で研究を行い、金持ちになることではなく博士号取得を 目指していた。博士論文は1つのテーマで学術誌に4,5編の論文を書く必要があるので、テーマ探 しは大切でいろいろ模索した。
いくつかの論文を書いたテーマはデータマイニングの研究である。スーパなどの店にくるお客が どのような組み合わせで商品を買うのかを分析し、その結果に基づいて商品を陳列するのに利用す る研究である。有名な例をあげると、あるスーパで売上げ額の大きいレシートを分析すると紙おむ つとビールを組み合わせて買うお客であることがわかり、分析結果に基づいて紙おむつとビールの 陳列棚を近づけたところ、目に見えて両商品の売上げが増加した。このデータマイニングの方法を 秩序のないwebコンテンツの世界に適用できないかを考えるに至った。
学術論文は多くの学術論文を参考にして書く。すぐれた学術論文は、多くの学術論文に引用され 学会に影響を与えている。webコンテンツも他のwebコンテンツからリンクを張られているweb コンテンツがいい情報源といえると、ペイジとブリンは思いついた。フリー百科辞典ウィキペディ ア(Wikipedia)を利用したことがあるであろうか。ウィキペディアに書かれている文章の中にブルー のアンカテキストがある。ここをクリックすると、この言葉についての詳しい説明のあるサイトの 情報がユーザのPCに表示され、これを読むことができる。これはウィキペディアの文章からその 文章について記述されているサイトにリンクが張られているためである。ウィキペディアからリン クを張った先のサイトはわかる。しかし、ウィキペディアなどに張られているリンク元は、1995 年時点ではわからなかった。ペイジとブリンは、データマイニングの方法を秩序のないwebコンテ ンツの世界に適用するためには、このリンク元を知ることが手がかりになるのではないかと推測し た。そして、リンク元を知ることをバックリンクと呼んだ。学術論文の大きな評価基準は引用され た数であるのと同様にwebコンテンツの価値はバックリンクの数が使えるのではないか、と考えた。
ペイジとブリンは試行錯誤の末、世界中のwebサイトをダウンロードしてリンクを調べる以外バ ックリンクを知る方法はないと判断し、それを実行することにした。世界中に存在するwebをペイ ジとブリンのサーバにダウンロードし、そこに張られているリンクを調べる。ただ数を勘定するの でなく、リンクを張ったサイトがどのくらいのリンクを張られたリンクであるかも評価する。検索 されたキーワードについてのサイトがもつ情報の価値を、多くのまじめなユーザがリンクを張るサ イトのランクは高く、そうでないサイトはむしろペナルティの意味で低いランクにするアルゴリズ ムを考案し、実装した。それが終了するとそのwebコンテンツはペイジとブリンのコンピュータか ら消去する。これを実行するためには高性能のコンピュータが必要である。ペイジとブリンは、研 究費が少なかったので、当時大学で使用されなくなった古いコンピュータを集め、これをイーサネ ットで接続し、個々のコンピュータの性能をトータルであたかも高性能のコンピュータとして動作 するクラスタ技術を利用した(4)。これは、NASAのドナルド・ベッカが開発したベオルフシステム である。ベオルフシステムについては3章で述べる。
2.3 ページランク(3)
1996年、古いコンピュータをクラスタ化したシステムでwebコンテンツをそっくりダウンロー ドしてバックリンクをつきとめる研究が行われた。自動プログラムを開発し、それを使用してバッ クリンクの数を測定すると、張られているリンクが多いリンクと少ないリンクがあることもわかっ た。したがって、張られているリンクが多いリンクからのリンクと、少ないリンクから張られてい るリンクは重みを加味して評価する方が、webユーザの評価に近い評価方法となることにも気がつ き、これもwebコンテンツ評価プログラムに盛り込み、ページランクと命名した。一般ユーザから のリンクより、重要なサイトからのリンクに重みをつける機能をつけた。このようにして、1つの キーワードに対してのページランクをインデックスサーバに収めた。ページランクされているweb のコンテンツをドキュメントサーバに収録した。
1997年、ページランクと従来からある検索プログラムを合体させてスタンフォード大学内で試運 用を開始した。使用したコンピュータシステムは、3.1で述べるベオルフシステム、および3.2で 述べるLinuxをOSとして使用した。その結果、学内でユーザが求める情報を的確に、迅速に表示 してくれるという評価とスタンフォード大学内ユーザが口コミで広めたおかげで、またたく間にス タンフォード大学内に広まった。そのころにこの検索システムにGoogleの名がつけられた。 1997年には、検索エンジン技術はほぼ完成し、あとはデータベースマシンの能力を格段に上げ、 ネットワークの帯域を確保すれば、世界中のユーザにサービスを提供できる目処がついた。マシン とネットワークの帯域の確保は、大学院の学生にとっては巨額の資金が必要なので、この技術をラ イセンスするか売却して、ラリーとブリンは博士論文執筆に戻ろうとした。
この時期、前に述べたようにアルタビスタ、エキサイト、ライコス、インフォシーク(Infoseek) などの検索エンジンが利用されていたが、検索結果は2.1で述べたようにいかがわしいサイトが上 位に出力され、インタネット上の検索はビジネスにならない、ベンチャキャピタルが投資しないと いう時期だったので、検索技術に投資する企業は見つからなかった。
結局、ラリーとブリンは自分達でベンチャを立ち上げることになったのである。
3.1 高性能コンピュータ
グーグルが提供する検索エンジンは、300億ページのwebから情報を集め、インデックスをつけ、 かつそのサイトの持つ情報の価値を、検索されたキーワードに関して最も有益な順にサイトをラン ク付けし、検索結果を短時間内に表示するために、桁違いの高性能コンピュータを必要とする。
1965年から、ムーアの法則(5)が続いている。半導体集積回路の集積密度が1年半毎に2倍になる ことが、約40年続いているのである。今日、科学技術の進歩が早いと感じられるのは、根底にこ のムーアの法則が続いているためである。ムーアの法則の結果に最も恩恵を受けているのはコンピ ュータである。PCのCPU(Central Processing Unit)は毎年インテルが億の単位で全世界に供給し ている。一方、大型コンピュータは、世界のシェアトップのIBMでさえ年に1000台は受注してい ない。計算能力に特化したスーパコンピュータはさらに受注台数が少ない。その結果、当然高性能 コンピュータのコストパフォーマンスは、PCに比較して低い。
1994年、NASAで高性能コンピュータを必要としていたが予算はない。そこで、ドナルド・ベ ッカはコストパフォーマンスの高いPCを多数ネットワーク接続し、あたかも1台の高性能コンピ ュータとして動作するコンピュータの開発を始めた。正式な名称はクラスタ技術であるが、IBMな ど大型コンピュータ業界がユーザに暴力的価格を要求するので、ユーザを暴力から解放する意味を 込めて、暴虐なグレンデルから民衆を解放した英雄ベオルフの名に因んで、プロジェクト名をベオ ルフとして開発を開始した。
1996年、ベオルフ1号機は完成した。CPUはインテルDX4(100MHz)16個を用い、10Mbpsのイーサ ネットハブで接続し、74MFLOPS(浮動小数点数演算を1秒当たり7400万回演算)を達成した。これは当時、 同等の演算速度をもつスーパコンピュータの価格の1/10で実現した。2.2で述べたように、ペイジと ブリンがバックリンクの研究を開始し、高性能コンピュータを必要としたが、予算がたりないその ときにこのベオルフシステムが開発されたのである。ペイジとブリンは大学内で使われなくなった 古いPCをイーサネットで接続し、少し高性能なコンピュータを組み立てたのである。
3.2 クラスタコンピュータのOS(Operating System)
PCにWindowsやMacOSのようなOS(基本ソフト)が必要であるのと同様、クラスタコンピュータにも OSは必要である。安価に入手可能で、クラスタコンピュータ用に修正可能な既存のOSとしては、 Unix, FreeBSD, Linux(6)(7)(8)に絞られる。1990年来、多くのハッカ達が作り上げたLinux は処理能力が高く、柔軟性があり、拡張性を有し、堅牢である、という理由でクラスタコンピュー タのOSとして採用され、改良して使用した。
ペイジとブリンが古いPCを接続して作成したクラスタコンピュータのOSも、2人がオープン ソースのLinuxを改良して使用した。ペイジとブリンはハードウエア、ソフトウエア両面にわたっ て一流の技術を持ちそれを応用した。
このようにしてペイジとブリンが組立てたクラスタコンピュータは安価で、拡張性に富み、堅牢 なシステムとなった。全体として1台の高性能コンピュータとして動作するが、構成する1台のPC が故障しても全体は停止することなく、十分に機能するという特徴をもつ。現在は、40 - 80台の PCを1つのラックに収め、2台程度のHDDをつけ、10 - 100のラックを集めたクラスタを世界に 分散配置している。世界全体のPCの合計は45万台といわれる。
3.3 検索サービス会社グーグルの設立
2.3で述べたようにペイジとブリンが開発した検索エンジンは、これまでの検索エンジンより優 れていることをヤフー、AOL、ネットスケープ、マイクロソフトなどのポータルサイトに売り込ん だが、検索サービスは機能しないサービスであると思われた時代である。スタンフォード大学の先 輩で最も頼りにしていたヤフーのジェリー・ヤンとディビッド・ファイロへ売込みに行ったとき、 そんなに優れた検索エンジンなら自分達でサービスしてはどうか、といわれペイジとブリンは検索 エンジン売却の最後の望みを失った。
スタンフォード大学院の指導教授であるディビッド・チェリトンに大学院を休学することを相談 し、さらに先生知合いのベンチャキャピタルの紹介もお願いした。最初に会ってくれたのはアンデ ィ・ベクトルシャイムである。ベクトルシャイムはペイジとブリンの検索エンジンの説明を聞くと、 その長所を理解し、すぐに10万ドルを出資してくれた。因みにアンディ・ベクトルシャイムは、 かってサンマイクロシステムズ社のWS(Work Station)のCPUを開発した人である。サンWSの CPUはスパークチップと呼ばれ、最近20年間WSの世界のトップシェアを持つヒット商品である。 その後資金集めは順調に進み、KPCB、セコイアなどの大口や多くの小口合わせて1億ドルの資金 を集めた。ペイジとブリンは資金を節約しながら人を雇い、コンピュータ部品を購入し、自分達で 組立てた。1999年終わりに従業員は39人、事務所を借りて、検索エンジンの能力拡大に努めた。 しかし、収入らしい収入はなく経費は月に数万ドルかかっていた。
3.4 アドワーズ広告
2.3で述べたように1998年頃は、検索結果の上位にいかがわしいサイトで占められていたので、 インタネット広告は意義を失いつつあった。これを打ち破る試みがなされていた。
1998年2月、ゴートゥドットコム社のビル・グロスがTED(Tchnology Entertainment Design) 会議において、検索者のキーワードに関連して広告を検索結果に掲載する方法を提案した。これま での検索キーワードの数が多いサイトをデータベース化する検索エンジンは使用せず、新たにキー ワードに関する情報を集めデータベース化し、これに検索エンジンをつけた。ゴートゥドットコム 社の検索サイトだけでは、ユーザのアクセス数は少ないので、マイクロソフト、AOL、ネットスケ ープなどに検索窓をおき1クリックあたり10セントを支払ってゴートゥドットコム社の検索結果 を表示する、というものである。TEDの聴衆の反応はよくなかったが、実際にゴートゥドットコム 社が広告を取り始めると、広告主は徐々に増加した。いかがわしい広告を排除できたこと、テレビ や新聞に広告を出せない小さい広告主はネットの広告を利用したいなどの理由である。ビル・グロ スの方式は、ペイドサーチ(検索連動型広告)((9)と名づけられ、ゴートゥドットコム社はオーバチュア 社と名称を変えた。
2001年ビル・グロスは、グーグル社に協力してビジネスしないかと提案をしたが、グーグルは検 索結果を広告料に左右される提案には興味を示さなかった。そうはいってもグーグルは何か収益を もたらす仕組みを考え実行しなければならない。結局、オーバチュアのペイドサーチの考えを取り 入れた広告料×ユーザがその広告をクリックした数を広告のランク順にしたアドワーズ広告を 2000年から開始した。検索結果はユーザが欲しい情報の順に出力し、出力結果の右のスペースに小 さい広告を掲載した。広告料は1クリック当り何セントという取決めをネット契約し、自動引落と しをした。そのようにして経費を低く抑えた。広告料はテレビ、新聞などの広告料より安く、広告 の効果が大きいので広告主は増加した。
3.4 アドセンス(10)
2003年頃からブログという簡便なwebサイトが利用され始めた。自分の経験や考えをまとめて webにアップし世界に公開するものである。多くは日記風の記述であるが、日記以外に車の乗り心 地、DVD装置、カメラ、携帯電話、PC、PC付属装置などありとあらゆる商品の使い心地、便利 なところ、メーカによる違いなど自分の経験したことを公開するのである。それなりに有益な情報 がアップされているが、中にはカリスマブロガといわれる多くの人に愛読されるブログが現れた。 グーグルはブログの空きスペースに、ブログのコンテンツに関連した広告を、手数料を取って自動 的に掲載し、ブログの作者に広告料を支払うというビジネスモデルを考案し、実行した。これをア ドセンスといい、2003年に開始したが、2007年現在アドワーズ広告と同額の収益をグーグルにも たらしている。グーグル検索の結果がブログということもあるので、検索サービスと連動している。
3.5 その他のグーグルのサービス3.5.1 グーグル検索
筆者がグーグル検索するのは、教材作成のときである。教材原稿はLaTex( )を使用するが、矢印 はどのようにするか、スクリーン環境印刷のコマンドは何であったかなど、人に聞く前にグーグル 検索を利用する。LaTexに関する日本語の情報は数多くあり、情報を提供してくださる方々にいつ も感謝している。
教材の内容は、Linuxを使用したサーバ構築である。DNS, web, FTP, Samba, Mail, FireWall, 動 画コンテンツサーバなどを予め設定して教材を書く。Linuxは年に2回バージョンアップするので、 教材は毎年書き直す。マニュアル本を読んでもうまく行かないときは、グーグル検索をする。Linux に関する情報はネットに数多くアップされており、グーグルはそれらの情報を的確に検索してくれ るので非常にありがたい。ITの底上げにグーグルは貢献している。
3.5.2 グーグルニュース
グーグルニュースは、各新聞やTVニュースを寄せ集めたものではない。複数の記事をクローラ が収集し、比較して総合的に分析し、編集した客観的事実を読者に提供する。グーグルニュースと 新聞を読み比べると、読者は報道に違いや偏りがあることを知るであろう。
新聞は、ロイタ通信、AP通信などのキー局から得た情報を、営業が獲得した広告とともに編集 し、新聞紙に印刷してトラックで各地に運び、バイクで一軒一軒配達している。読者は、興味があ る記事をちょっと読み、広告は全く見ずに一日で捨ててしまう。これは壮大な無駄であり、人的資 源、エネルギ資源、森林資源などの無駄ははかり知れない。2007年10月1日、読売、朝日、日経 3社は、RSS(RDF(Resource Description Frame) Site Summary)でネットニュースサマリを流し、 記事本体は紙の新聞を買って読んで下さい、という連合を組んだ。読みたい記事をわざわざ買いに 行く読者がいると思っているのであろうか。
立派な記事を書く人は、web上でいくらも書ける。いい記事かどうかは読者が決める。いい記事 のサイト、ブログには広告掲載申込みが殺到するので、収入は十分得られる。グーグルは今後もニ ュースを無料で提供し続けるので、他の報道は常に比較されることになるであろう。
3.5.3 グーグルマップ
組織名、住所などをキーワードに検索すると、伸縮自在の地図が表示される。地図は、上下左右 スムーズに移動して見える。さらに、グーグルアースを選択すると、道路だけでなく人工衛星から 撮影した精密な航空写真を見ることができる。近い将来、地図にも広告が掲載されることになるで あろう。
3.5.4 Gメール
筆者は、自宅でもメールを送受信するために2002年からヤフーメールを学内メールと併用して いる。学内あてにきたメールをヤフーメールに転送すると、いつのまにかヤフーが割当ててくれた 10MBのメッセージストアではあふれてしまい、メールを下さった方々にご迷惑をかけた。Gメー ルは、メッセージストアの容量が1人当たり1GBと聞いたので、Gメールに変えようとしたとこ ろヤフーメールも1GBに拡大されたので、今もヤフーメールを使用している。Gメールがいい影 響をおよぼしたと思っている。
3.5.5 グーグルドキュメント(11)
2007年9月にサービスが開始された。グーグルのトップページを開き、検索窓の上にあるmore>> をクリックする。Googleサービス一覧が開き、コミュニケーションと共有の中のドキュメントをク リックする。ここでGoogleアカウントまたはGmailアカウントを要求される。アカウントは無料 なので取るとよい。
アカウントを入力すると、MSワードと同じ機能を持つGoogle Docs、MSエクセルと同じ機能 を持つGoogle Spreadsheets、MSパワーポイントと同じ機能を持つGoogle Presentationが使え る。これまで無料で提供されてきたOpenOfficeと同じであるが、違いはインストールしなくてよ いことおよび作成したファイルをオンラインで使えることである。
OpenOfficeは2003年からサービスされていたが、学生の一部は使用しているが、OpenOffice の使用はまだ限られている。グーグルドキュメントの使用拡大を期待している。
3.5.6 グーグルブックサーチ(12)
ペイジの学部出身大学であるミシガン大学図書館の蔵書約700万冊をディジタルデータにして世 界に公開する計画が進められている。同時に、スタンフォード大学図書館の800万冊、ハーバード 大学図書館1500万冊、アメリカ議会図書舘、ニューヨーク公立図書館、オックスフォード大学図 書館の蔵書約250万冊をディジタルデータにして世界に公開する計画も進められている。著作権団 体が抗議するので、著作権が残存する書籍は後回しにして着々と進めている。東京大学図書館にも 参加要請がきているが、決断が遅いと英語の情報は再利用されるが、日本語の情報は紙のまま埋も れてしまうことになる。
3.5.7 グーグルベース
住宅、自動車などの販売、料理のレシピ、求人、求職、住宅賃貸、チケット、本、CD販売など 生活に密着した情報を提供し、市内程度の狭い範囲で売ります、買いますの場を提供する。日本で はまだサービスされていない。決済は近い将来サービスされるグーグルチェックアウトが使用され るであろう。
4.1 グーグル以前のマーケティングの常識(13)
1897年、イタリア人学者ヴィルフレド・パレートが、縦軸を売上額、横軸を商品の種類として プロットすると、図4.1のように、左から急に下がり、あとはだらだらと延びることを見出した。 この図を分析したパレートは、売上額上位20%の商品の売上合計額が80%を占め、下位80%の商 品の合計額は20%にしかならない、という法則を導いた。この法則は、あらゆる商品、ソフトウエ ア、映画、音楽などにあてはまるし、人間社会のあらゆることにあてはまるといわれている。 これをパレートの法則、80:20の法則という名前でマーケティング理論で使われている。
4.2 アマゾンドットコム社(14)
1995年、ジェフリ・ベゾス夫妻はインタネット上での書店を思いつき、アマゾンドットコム社(以 下アマゾンと略記)を設立し、開業した。思いつきというのは、店舗を持たないので資金が不要、在 庫を持たないので運転資金が不要であり、最低限の人員とサーバコンピュータがあれば、開業でき るであろうと考えた。
本は売れたが、売上シェア全米一位のバーンズアンドノーブルが資金を使って値下げをしたため、 アマゾンは長い間赤字の経営が続いた。バーンズアンドノーブルの店舗にない売れない本もアマゾ ンのネット上の店舗にあるので、読者は検索して購入できた。このようにして読まれた本の中でよ いものはよいという書評がアマゾンのサイトにアップされた。書評を読んだ人のうち何人かが購入 するといった連鎖がおきている。
200万点を越える出版物があっても、大型書店に陳列できるものはせいぜい10万点である。ネ ット上なら200万点とその書評をおいても、テキストデータだけなら100GBで十分である。人間 が書店の書棚の前で眼で探すより、ディジタル化された書誌データのデータベースを検索する方が 早い。この便利さを利用した読者に支えられアマゾンは現在収益をあげているのは、大切なことで ある。なぜなら、今まで出版社、大型書店の宣伝力でベストセラが作られ、ベストセラの情報に偏 りがちであった情報源が、いい選択肢が多くなるからである。
アマゾンは、CD、医薬品、家庭用品などの中で有名ではないが、良い商品をネット上で販売し ている。アマゾンは、4.1で述べたパレートの法則でいうと、売上合計額20%の方のロングテール 商品の良い本や商品を届ける流通業者といえる。
4.3 グーグルのビジネス
グーグルのビジネスを端的にいえば、検索エンジン、ニュース、地図、データベース、メール、 アプリケーションソフトなど、今まで有料であったものを無料で提供し、それらを提供する画面に 小さな広告を掲載するアドワーズ、アドセンスを営む広告代理業であるといえる。広告主が大きく てもかまわないが、小さくてもクリック数に応じた広告料なので、料金に見合った効果がある広告 が出せる。会社概要、商品広告をweb上にアップし、広告申込みはすべてネットで行う必要がある。 会社概要は紙に印刷するのはやめてネットで配布することにすれば、経費はむしろ安くなる。日本 国内の250万社の情報がすべて電子化されると、自社が必要としている取引先を的確に検索できる。 この取組みは産業が停滞している地方の中小の都市にいい影響をもたらす。地方の中小の企業は自 社の情報を経費がかからないweb上にアップするだけで業績があがる可能性がでてくる。 米国で はもちろん日本でも、今までの方法では広告が出せない中小の企業がアドワーズ、アドセンスを活 用して広告を出し、業績を伸ばした例が多数報告されている(15)(16)(17)。参考にするとよい。
グーグル検索を利用すると、物を購入する人は、広告を見て買うのでなく、店頭で店員が売りた い物を買うのでなく、ネットで検索していろいろな人の書き込みをよく読んで、結果としてロング テールまで選択肢に入れて判断するという賢い行動ができる。DVD装置を買う前にDVD装置と使 用後の感想またはクチコミをキーワードとして検索、上位の情報をクリックすると使用後の感想や クチコミ情報が得られる。さらにキーワードに関連した広告を見ることができる。何回も店頭へ足 をはこばなくても商品情報が得られる。
アマゾンが書籍で実現したロングテールから新しいビジネスを発掘したことを、グーグルは広告 業で実現したといえる。グーグルはアマゾンよりずっと高収益で実現した。それは賢い広告主と賢 い消費者がツールとして選択しているため広告の効果が高いのが理由である。また、2005年度の日 本の媒体別広告費は、テレビ2兆円、新聞1兆円、雑誌4千億円、ネット3千億円である。ネット の伸びる余地は十分残っている。なお、米国のネット広告費はグーグルだけで1兆円を越えている。
4.4 グーグルの弱点
自分のサイトやブログに広告を取り、その広告を自分で多数回クリックすると自分の広告収入が 増える。しかしこれは明らかな詐欺行為である。グーグルは自社にも広告料手数料が入るにもかか わらず、同じアドレスから不自然なクリックがあった場合は自動的に発見し、そのサイトやブログ のページランクを最下位にする。このような措置に対する非難の声が聞こえるが(18)、広告主や一般 利用者から見ると、公平な有難い機能である。決して弱点ではない。もう一つ中国国内で天安門事 件をキーワードに検索しても情報は表示されないのはいけない、という非難がある(19)。これも中国 以外の国では天安門についての情報は得られるので、日本人や米国人がグーグルを非難することは お節介であろう。グーグルを使うと人間が馬鹿になる(20)という非難もあるが、それは個人の自由で あって馬鹿になると思う人は使わなければいいだけの話である。ランク付けは別にして、情報選択 の決定権はユーザにあることが、賢いユーザに支持されている。
大きな企業はお金を出せば、ネット上で自社の製品を良く書いてもらえる、と思って世界的に有 名な日本のS社が実際にアップした。しかし、そのような書込みは、実際に使用した複数のユーザ に本当の使用感を書き込まれすぐに否定される。賢いユーザは、賛成意見、否定意見両方を読んで 行動する。これをグーグルがサポートしている。
1995年に、ビル・ゲイツ未来を語る、という本が出版された。8章に摩擦ゼロの資本主義という ところがある。CPU能力が向上し、ネットワークの帯域が広がると、ネット上で自分が欲しいも のを探し、ネットで注文することにより、生産者から消費者に直接品物が届くので、取引きのコス トが下がり無駄な経費がかからなくなる。それを摩擦ゼロの資本主義といい、それによって人類の 生活は向上する、と未来を語った。だから、マイクロソフトのソフトがインストールされたPCを 買ってどんどん使用して下さいと述べた。13年経過したいま摩擦ゼロの資本主義を実現しつつある のはマイクロソフトではなくグーグルであるといえる。